スリランカより活動報告 金瀬寛志

2014/03/12

淡水会報春号に寄稿いただきした。先に紹介致します。

スリランカより活動報告
              平成26年3月 金瀬寛志



日本ではいかがお過ごしでしょうか。スリランカに来て、早くも8か月が経過しました。私は幸い事故や大きく体調を崩すこともなく、活動そのものは順調といえないまでも一応前進しているような気がします。今回は淡水テニスクラブへの寄稿ということなので、正直なありのままのスリランカ生活での感想を書くこととします。

私は(現実逃避のため)青年海外協力隊に平成25年度1次隊として参加しました。昨年4月より長野県駒ケ根市にて英語の語学訓練をしたのち、7月にスリランカへ派遣されました。スリランカでは一番大きな都市コロンボにて2か月のタミル語研修ののち、東部の地方都市バティカロアに赴任し、テニスの普及や技術向上に努めています。

スリランカに来て最初に驚いたことは、生活物資の豊富さです。日本から日焼け止め1リットル、コンタクトレンズ洗浄液を5リットルも持ってきたのに普通にスーパー売っているのを見たときは萎えました。それから事前に調べていましたが物価の安さは嬉しいです、食費は私の感覚では日本の3分の1くらいです。バスは市内であれば15円程度、三輪タクシーは初乗り40円程度です。またバスについては外国人から見ると突っ込みどころが多くて、ドアは空きっぱなし、最前列は僧侶優先座席、運転は荒く、特に乗り降りが一人しかいないときはちゃんと止まってすらくれないので軽く助走をつけて乗ります。
日本の常識は当然ながら通用しません。スーパーの対応は「お客様はただの人」、100ルピー程度の商品に、1000ルピー札を出すとイラっとした顔で「Change!」と言われます。またお釣りは端数を勝手に切り上げたり切り捨てたりされます。こちらに来て間もないころ「え、足りないですけど」って顔をすると「今、レジに小銭がないのよ。」と軽くあしらわれました。日本にいるといい加減なサービスと思うかもしれませんが、慣れると何とも思わなくなりました。

家庭での食事は朝昼晩カレーです、ですが主食は常にライスではなく、クレープ生地のようなものや、麺状のものがあります。都市部では食事の欧米化が進みつつあるようですが、スリランカで食べる日本食や洋食はこちらの物価からするとかなり高いので、まだ一般的とは言えないようです。
 南の島ということで勝手な思い込みで海はきれいだと思っていましたが、ほとんどの砂浜は岩石が多く含まれており白くないです。がっかりです。しかし山間部は茶畑に囲まれて美しく日本では見られない雰囲気を持っており見どころが多いです。
また世界遺産が多いのも特徴ですが、山間部の道路は荒れていて、1台のバスにつき約3名のスリランカ人が酔っています。

 タミル語研修終了後、東部州バティカロアに赴任しました。この地は数年前まで内戦があり、また津波の被災もあったとのことですが、現在は道路も整備されており日常生活でこれらのことを感じることはほとんどありません。たまにタミル人からシンハラ政権に対する不満を聞くことがあるくらいです。治安も非常に良いです。赴任早々、家の近所でゲイにナンパされて股間を触られたという痴漢被害は1件ありました。
 我が家は、街の中心から少し外れた湖畔にあります。そこらへんで牛やヤギが放し飼いにされており、夕方まで我が家は牛に囲まれていて、夜になると近所の若者たちのたまり場になり、早朝は漁師が小さな船で漁にでます。

さて、肝心のテニスについてですが、スリランカではやはりまだまだお金持ちのスポーツです。ただし、日本に比べてコート代が10分の1程度で、人件費も安いので都市に住む一般家庭の子供たちでも続けることが不可能ではありません。半年のあいだで6〜13歳の生徒を40名弱から約70名まで増やすことができました。今年中に生徒100名、それから選手育成を目的としたコースの立ち上げが今の私の目標です。

 実際に活動してみると問題点は多いです。スリランカでは公的機関のスケジュールですらすぐに変わってしまうため計画通り物事が運びません。また、他の協力隊員と共有するスリランカ人の特徴としてプライドが高い、時間にルーズといった一面があります。こちらのヘッドコーチはそれに加えてポイ捨てをする、日本から送ってもらったラケットを自分のものにするというモラルの低さ、私のストレスは一溜まる方です。

 タミル人の子供たちは少しシャイなところがあり、性格は日本人とよく似ている気がします。落ち着きがない子ももちろんいますが、日本の同年代の子供たちと変わりありません。テニスを習いに来る子供たちはやや裕福な家庭の子が多いこともあり、英語を話せる子供が多く、英語に簡単なタミル語を交えながら指導しています。言葉がわからないときは日本語で気合を込めて話すと意外に伝わることが最近わかってきました。

町の人たちはとても友好的です。中高生の「Hey!CHINA!」はかなり鬱陶しいですが、それ以外は適度な距離感で非常に住み心地が良いです。休日には町の散策をしたり、町のサッカーチームの練習に入れてもらったりしています。顔見知りも多くなりました。しかし「スリランカで結婚しないのか」という質問だけには断固拒否しています。ちなみにスリランカ女性はきりっとした美人が多いです。ただムダ毛処理をしてほしいというのが在スリランカ日本人男子共通の願いです。

 スリランカ人から見た日本について、基本的には好印象のようです。第2次世界大戦の後の講和会議で当時のスリランカ大統領が日本からの賠償を放棄したことが、この国ではよく知られています。このことについて「日本ではあんまり知られてないですね」と言える雰囲気ではないのでみなさん知っておいてください。
 スリランカの人たちは海外へ移住する人が多いのですが、日本は物価が高く閉鎖的というイメージがあり、敷居が高いようです。物価が高いという点に関しては少し思い込みがあるような気がしますが、日本は閉鎖的ということに関しては考えさせられることが多いです。ビザなどの政策的な面についてもそうですが、一番強く感じるのは語学の面です。昨今の世界で、首都圏ですら英語で生活することが困難な国は多くありません。スリランカでは小学校から英語を学び都市部の若い世代の子供たちのほとんどは英語を理解できます、3か国語話す人も珍しくありません。
また語学以外でわかりやすい例を一つ挙げますと日本人はベジタリアンと言えば宗教的理由もしくは偽善的な動物愛護者というような少し否定的な見方をしている人が多いと思います。(私が感じているだけかもしれませんが。)しかしこの国では栄養学的な観点や、単純に肉が嫌い、また家畜飼育に多量の穀物を必要とすることなどの理由でベジタリアンになる、もしくはベジデイ(肉を食べない日)を設定するということが一般的で、私が思っていたようなベジタリアンはほとんどいませんでした。日本にはベジタリアンメニューがあまりないので、日本に旅行されたことがある方は大変苦労したそうです。

 外国での生活は想像以上に新たな発見があり、自分の変化を確かに感じます。また外国の生活を経験した後の日本の生活が自分の目にどのように映るか今から楽しみにしています。
 スリランカの活動は残り1年ちょっとです。協力隊に参加してから月日が経つのは早く、あと1年はあっという間に過ぎていくことでしょう。目標達成に向けてすべきことは多いです。また、協力隊の活動以外のことでもしたいことはたくさんあります。残された時間は本当に少ないです。

 現役部員のみなさん、今年のリーグ戦も楽しみにしています。ぜひ4部昇格に向けて練習に励んでください。健闘お祈りしています。

ブログで日々の生活を綴っておりますので、お時間ありましたら是非一度ご覧ください。
来年のOB総会で皆様にお会いできることを楽しみにしています。

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